萱草の隣で胎児のように丸くなっている朽葉は、ぴくりとも動かずに眠っていた。
馬鹿げていると自分でも思うのだが、もしかして寝ているのでは無く死んでいるのではないか、と心配になり時折その口元へ手をかざす。
今もまた翳した手に微かな空気の流れを感じて、萱草はそっと吐息を吐き出した。
白い吐息が空中で霧散する。
火の側は暖かいが、壁際は少し温度が低い。
けれど先ほどまで吹き込んでいたすきま風はぴたりと止んでいて、萱草は扉の方へと目を遣った。
外はどうなっているのだろうか。
もしかしたら先日から静かに降り続いている雪はこの小屋を覆い尽くしてしまったのかもしれない、と萱草は考え、そして雪の奥深くに閉じこめられてしまったこの小屋を想像する。
真っ白な雪。
視界を覆い尽くす程の白。
圧倒的な質量の中、静かに埋もれてゆく小さな小屋。
ん、と朽葉の口から声が漏れた。
小さく身じろぎをして朽葉はぼんやりとした目で萱草を見る。
不思議そうに問いかけるその視線に萱草はゆるゆると首を振ってみせた。
そしてそれから、うっすらと開いた目を手で覆う。


「何でもない。もう少し眠れ」


萱草の言葉に、安堵したような表情を浮かべた朽葉はゆるりと目を閉じる。
再び規則正しく胸が上下し始めたのを確認し、萱草は目を覆っていた手を離し額にか
かる髪を避けてやった。
静かだった。
パチパチと時折小さく炭のはぜる音しかしない。
萱草は音を立てないように、丸くなって眠る朽葉に寄り添うように横たわる。
その温もりに体を寄せ息を潜めて目を閉じながら、
例えば雪によって外界と遮断されたこの場所でこのまま二人静かに朽ちていくことも恐ろしくは無いとそう思った。















子萱と子朽葉は退廃的な臭いがします。
二人で一緒にひっそりと沈んでいくイメージ。