T.ナイフが美しい軌跡を描いてジノの皮膚を掠めた。
とっさに身を引き寸での所でその切っ先をかわしたつもりが、擦られた頬がチリチリと痛む。
もう一瞬反応が遅れていたなら、頬を深く抉られていたかもしれない。
すばやく距離を取り、ナイフの切っ先をジノへと向けた少女を見る。
可愛らしい外見と華奢な体躯。
背などはジノの肩にも満たない。
それなのに。
桃色をした髪が揺れて、緋色の双眸が獲物を狙い定める鋭さでジノを捉える。
微かに体が沈んで、咄嗟に、くる、と判断する。
肌が微かに粟立った。
恐怖ではなく興奮に。






U.力に物を言わせて華奢な手に握られていた剣を吹っ飛ばした。
高い金属音と共に驚いたようにアーニャの目が見開かれる。
くるくると回って飛んだナイフは随分と離れた場所に落ちた。

(さあ、どうする?)

今までの戦闘で、ジノの腕は十分に分かっている筈だ。
ナイフを拾いに行く為に背を向ければその隙に捻じ伏せられるだろう、ということも。
自分がもしあの少女だったならば―――とジノは思考を巡らせる。
多分一度体制を立て直すために距離を取る。
だが、そう判断したジノの予想を裏切って少女はジノの懐に深く踏み込んだ。

(な、)

不意を突かれ僅かに反応が遅れた所へ踏み込んだその足を軸に体を回転させたアーニャの容赦の無い蹴りが叩き込まれる。

「っ…てぇ!」

ジノは痺れた腕に顔をしかめる。
剣が駄目だと判断したら即座に次ぎの攻撃に移る――まさに流れるような動きだった。

「ははっ―――いいねえ」
「何が」
「合格だ」

ジノの愉悦を含んだ言葉に少女の目は冷ややかに細められる。

「何様、不愉快」

ジノは無意識の内に笑みを浮かべる。
そして慣れた手つきで短剣をくるりと回して握り直す。






V.背中で腕を捻り上げられて床に押さえつけられたアーニャが小さく呻いた。
肩で大きく息をしているアーニャを見下ろし、ジノもまた呼吸を整える。
桃色の髪が揺れて、顔の半分がジノの方を向いた。
濃い翡翠色の目。
いつもはまるで物でも見るかのように無感動なそれが、今は感情を伴ってジノに向けられていた。
怒り、屈辱、、それとも憎しみだろうか。
その種類をジノは判別することは出来なかったが、とにかくそういった酷く生々しい感情の宿った目が射るようにジノを睨みつけていた。
押さえつけた体が不規則に上下するのを見ながら、ふう、とジノは静かに息を吐だした。
それから、おっかしいなあ、と小さくぼやいて目を細める。

「俺は別にさ」

切れて血を滲ませている己の唇に這った指を一瞥し、アーニャの顔が不快げに歪む。
嫌悪感を露わにするアーニャにはお構い無しにジノの指は唇をなぞり小さな傷口に触れた。
しかし、触れる、と言には随分と容赦の無いそのやり方に、アーニャはう、と小さく呻く。

「そんな趣味は無いんだけどなあ」

じんわりと広がった鈍い痛みにアーニャが顔をしかめる。
指先に付いた赤いその色には最早なんの興味も沸かなかった。
ジノは更に体を屈める。
その瞬間アーニャが上半身に力を込め、バネのように跳ね起きようとしたが容赦無く背中で捻り上げた腕ごと地面に押さえつける。
強かに地面に肩をぶつけて、再び呻いたアーニャの瞳にジノが映る。
ああ、おかしい。
今日の自分は本当におかしい。


「―――死ねばいいのに」


緩やかに弧を描いた己の唇が彼女のそれに触れる直前、アーニャは吐き捨てるようにそ
う言った。





S vs SかつS×Sとか萌える。
当初とか女の子&最年少ラウンズなアニャに興味津々なジノとかいい。