「待って下さいヴァインベルグ卿…!」
「我々が…!」
―――ああ、うるさい。
複数の人間が叫ぶ声にうっすらとアーニャは目を開けた。
体が酷く重たい。
まるで泥の中に沈んでいるかのようで、腕を上げることすら億劫だった。
ガチャガチャという酷く耳障りな金属音が聞こえていたかと思うと真っ暗だったコクピットに光が差し込む。
金色の光。
眩しいその色。
「よっアーニャ!」
ジノがコクピットの扉を片手で押さえこちらを覗き込んでいる。
「大丈夫かー?」
ジノは更に体を屈めてアーニャに手を伸ばす。
頬に手袋の感触。
「―――ジノ、煩い」
「おっ、起きてるなー」
「そんなに喚かなくても、聞こえてる」
軽く目を見開いた後それもそうか、と彼は笑い声を上げる。
「おっと今出してやるから動くなよー」
よっ、という掛け声と共に更にジノは体を屈めコクピットの中に入り、片腕で抱きしめるようにアーニャを抱えあげた。
「しっかし相変わらず軽いねぇ、お前は」
彼の声は笑っている。
まるでこれが普段と何一つ変わらない日常の延長であるかのような気軽さを含んでその声は大気を震わせている。
「スザクももう戻ってくると思うんだよなー」
「………」
「そしたら、腹も減ったし三人で何か美味いものでも食べに行こうぜ!」
「………」
「アーニャ、何食いたい?」
「…ジノ、」
「ん、何でもいいぞー?」
「私は、平気」
小さな声で、けれどハッキリとそう告げる。
軽やかな声とは裏腹に、欠片も笑ってなどいない目でアーニャを見返したジノに向かってもう一度同じ言葉を繰り返す。
「ジノ、―――私は、平気」
ジノの顔がくしゃりと歪む。
だから、そんな泣きそうな顔をしないで。
笹倉さんのジノアニャで更にジノアニャ熱が上がって出来た代物。
あの時すぐさまカバーに入ったジノにも萌えたんだけど、帰ってきた後も「まだ開かないのか!」とか必死だったらいい。
でもアーニャの前では笑ってたりとかすればいい。
妄想は∞。